令和2年10月1日からは若手人材が慢性的に不足する中ますます貴重な未来の監理技術者人材の確保のため監理技術者補佐、特定監理技術者の資格制度も始まりました。
この記事を読むことで主任技術者、監理技術者、監理技術者補佐、特例監理技術者の意味についてわかるようになります。
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建設業許可業者には主任技術者や監理技術者の施工現場への配置義務が課せられています!
軽微な建設工事のみ行う業者に主任技術者や監理技術者の配置義務無し!
逆にこれらの基準に満たない「建築一式工事ではない消費税込500万円未満の工事」「消費税込1500万円未満の建築一式工事」そして「建築一式工事でかつ延床面積150㎡未満の木造住宅工事」を行う場合は【軽微な建設工事】といって建設業許可を必要としておりません。
したがって軽微な建設工事のみを行う業者については主任技術者や監理技術者の配置義務もありません。(ただし軽微な建設工事でも「現場の責任者」は定めなければならないとされています。)
一般建設業許可業者には主任技術者、特定建設業には主任技術者や監理技術者の配置義務あり!
一般建設業許可とは元請業者となる場合の下請業者に発注する契約金額の合計の額に制限のある許可区分です。
一方、特定建設業許可とは元請業者となる場合の下請業者に発注する契約金額の合計の額に制限のない許可区分です。
したがって特定建設業許可の方が責任範囲が大きくなるので建設業許可の取得条件が厳しくなっています。(出典:建設業法第3条第1項関係)
元請工事として取り組む工事の下請業者に発注する契約金額の合計の額の規模が一般建設業許可業者の許可要件の規模なら主任技術者の資格者を配置しなければなりません。
したがって一般建設業許可業者においては監理技術者の資格者の存在は必須ではありません。
元請工事として取り組む工事の下請業者に発注する契約金額の合計の額の規模が特定建設業許可業者の許可要件の規模なら監理技術者の資格者を配置しなければなりません。
したがって特定建設業許可業者においては監理技術者の資格者の存在が必須となります。
特定建設業許可業者が元請として受注した工事の中で、「一般建設業許可」で受注できる規模の工事や「軽微な建設工事」の規模の工事ならその現場には主任技術者の配置でもOKです。
建設業許可業者の主任技術者配置義務と元請、下請、請負金額との関係!
建設業法第26条第1項においては
建設業許可業者が建設工事をする場合には、
「元請なのか」「下請なのか」「請負代金の額がいくらなのか」に関係なく工事施工現場の技術上の管理を司る者として「主任技術者」を配置しなければならない
としています。
建設業許可の不要な軽微な建設工事、すなわち下記※1、※2、※3の工事範囲のみを行う業者については主任技術者の配置義務もありません。
※1:29業種のうち建築工事業許可「建築一式工事」で消費税込1500万円未満
※2:建築工事業許可「建築一式工事」でも木造住宅工事の場合は延べ面積150㎡未満
※3:その他28業種の建設工事の場合は消費税込500万円未満
(ただし軽微な建設工事でも「現場の責任者」は定めなければなりません。)
建設業法ではこのように建設業許可業者の主任技術者配置についてたいへん厳格なものとしています。
建設業許可業者の監理技術者配置義務と元請、下請、請負金額との関係!
建設業法第26条第2項において、建設業許可業者が建設工事をする場合には、
元請として契約を締結した建設工事における下請契約の請負代金の額の合計で一般建設業許可業者で足りるか、特定建設業許可業者でなければならないかが区分されます。
下請契約の請負代金の額の合計が消費税込4500万円【建築一式工事の場合は消費税込7000万円】以上となる場合には、一般建設業許可の建設業許可業者は受注できず、特定建設業許可の建設業許可業者でなければなりません。<下請契約の請負代金の額の合計については建設業法施行令改正により令和5年1月1日施行>
そして
特定建設業許可でなければ施工できない施工現場の技術上の管理を司る者については主任技術者にかえて監理技術者を配置しなければならない。
としています。
専任の監理技術者、営業所の専任技術者、監理技術者資格者証、特例監理技術者、監理技術者補佐について!
専任の監理技術者について
建設業法第26条第三項において
公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事に配置される監理技術者等は、工事現場ごとに専任の者でなければなりません。
としています。
ここでいう「公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物」とは建設業法施行令第27条に定めてあり、
「重要な建設工」とは工事1件の請負代金の額が消費税込4000万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあっては消費税込8000万円)以上のもの
で、戸建ての個人住宅を除くほとんどの工事が該当します。
「工事現場ごとに専任の者」とは、一つの工事現場の担当として限定されているという事であり、他の工事現場の「主任技術者」や「監理技術者」及び「※営業所の専任技術者」などとの兼務をしてはいけないということです。
また「工事現場ごとに専任の者」は元請業者、下請業者に係わらず、常時継続的に該当工事現場に設置されていなければなりません。
第二十七条 法第二十六条第三項の政令で定める重要な建設工事は、次の各号のいずれかに該当する建設工事で工事一件の請負代金の額が三千五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、七千万円)以上のものとする。
一 国又は地方公共団体が注文者である施設又は工作物に関する建設工事二 第十五条第一号及び第三号に掲げる施設又は工作物に関する建設工事三 次に掲げる施設又は工作物に関する建設工事イ 石油パイプライン事業法(昭和四十七年法律第百五号)第五条第二項第二号に規定する事業用施設ロ 電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第五号に規定する電気通信事業者(同法第九条第一号に規定する電気通信回線設備を設置するものに限る。)が同条第四号に規定する電気通信事業の用に供する施設ハ 放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第二十三号に規定する基幹放送事業者又は同条第二十四号に規定する基幹放送局提供事業者が同条第一号に規定する放送の用に供する施設(鉄骨造又は鉄筋コンクリート造の塔その他これに類する施設に限る。)ニ 学校ホ 図書館、美術館、博物館又は展示場ヘ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第一項に規定する社会福祉事業の用に供する施設ト 病院又は診療所チ 火葬場、と畜場又は廃棄物処理施設リ 熱供給事業法(昭和四十七年法律第八十八号)第二条第四項に規定する熱供給施設ヌ 集会場又は公会堂ル 市場又は百貨店ヲ 事務所ワ ホテル又は旅館カ 共同住宅、寄宿舎又は下宿ヨ 公衆浴場タ 興行場又はダンスホールレ 神社、寺院又は教会ソ 工場、ドック又は倉庫ツ 展望塔2 前項に規定する建設工事のうち密接な関係のある二以上の建設工事を同一の建設業者が同一の場所又は近接した場所において施工するものについては、同一の専任の主任技術者がこれらの建設工事を管理することができる。
営業所の専任技術者とは?
すなわち建設業法上の営業所とは本店だろうと支店だろうと常時建設工事の請負契約を締結できる備えのある事務所をいいます。
それらに該当しない場合であっても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行う等建設業に係る営業に実質的に関与する者である場合には、営業所に該当します。(建設業許可事務ガイドライン)
なお、契約締結権限のない単なる連絡事務所などは建設業法上の営業所に該当しません。また、専任技術者の配置がない場合も営業所に該当しません。
また営業所の専任技術者は現場における監理技術者等になることはできないとされています。
監理技術者の資格者証制度について
特定建設業許可業者が、重要な工事現場ごとに専任の者として配置する監理技術者とは、建設業法第26条第五項で
監理技術者資格者証の交付を受けており監理技術者講習を受講したものでなければならない
としています。
さらに建設業法第26条第6項では
専任の者として選任された監理技術者は発注者から請求があったときは監理技術者資格者証を提示しなければならない
としています。
このように厳格なルールのもとに運用される監理技術者資格者証の交付事務機関は、建設業法第27条の19により国土交通大臣が指定する「指定資格者証交付機関」である
が担っています。
尚、監理技術者資格者証の有効期間は交付日から5年間ですので監理技術者として配置される場合には、有効期限が切れないようにしなければなりません。
建設業法第26条第5項などにおいて、監理技術者講習は、国土交通大臣の登録する「登録講習実施機関」において、講習や講習の終了証の発行事務を行うとしています。
登録講習実施機関は、平成29年5月1日現在で6機関が登録されており全国で登録機関ごとに講習日程が組まれていますので都合に合わせて講習を受けることが可能となっています。
国土交通省ホームページ「監理技術者講習の実施機関一覧」はこちら
監理技術者証及び監理技術者講習修了証の統合について
平成28年6月1日より監理技術者証の裏面に講習修了履歴を貼り付けるようになり1枚に統合されました。
特例監理技術者と監理技術者補佐について「監理技術者の専任条件の緩和」
監理技術者の専任条件が緩和された一番の理由は「人材不足の解消」です。
建設業界は慢性的に人材不足です。
特に監理技術者の数は限られますのでこれらの貴重な人材を有効活用するのが新制度の狙いです。
またDXの進展で「離れた場所から複数の現場を施工管理する」技術の広がりも制度改正を後押ししたようです。
すなわち監理技術者を補佐する者(=監理技術者補佐)を当該工事現場に専任で置くときは監理技術者の兼任を認めるということです。
「専任の監理技術者」の代わりに「専任の監理技術者補佐」を配置すると監理技術者は「特例監理技術者」となり、専任でなくても構わない(他の工事現場と兼任できる)という制度です。
なお特例監理技術者が兼任できる工事の数は「2か所まで」とされています。
まとめ 主任技術者、監理技術者、監理技術者補佐、特例監理技術者
最後までお読みいただきありがとうございました。
監理技術者や主任技術者になるためにどのような実務経験が必要でどんな国家資格に合格していかなくてはならないかについては別の記事で詳しくお伝えしますね。